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第4章 ゼオライトをさらに深く理解する
2.ゼオライトによる体内の放射性物質除去
羊と乳牛による検証
ゼオライトは体内でどのように放射性物質を吸着・排出するのでしょうか。
1988年に発表された『チェルノブイリ原発の放射性物質に汚染された飼料で飼育された羊の放射性セシウム吸収の低下』(スイス・ベルン大学作成)という論文には、ゼオライトがビーカー内においてセシウムを効果的に吸着するだけでなく、羊の体内においても、汚染された牧草から摂取したセシウムの吸収を抑制したと記されています。
また、1986年にベルン大学で発表された『チェルノブイリの悲劇』という論文にはこのような記述があります。
ブルガリアでは牛のミルクの放射性セシウムを減らすために、牛のえさに10パーセントのクリノプチロライト(ゼオライトの一種)を混ぜたところ、ミルク中のセシウムを30パーセント減量することができた。そして、子どもたちのセシウムを除去するために、チョコレートとビスケットに重量あたり20〜30パーセントの粉末クリノプチロライトを混ぜて与えた。
残念なことに、この論文には子どもたちにゼオライト入りのお菓子を食べさせたことによる結果は記されていません。おそらく追跡調査が難しかったのでしょう。
前の方でも説明いたしましたが、ゼオライトによる体内の放射性物質の吸着と排出に関しては、それを証明するだけの十分な証拠がそろっていないというのが現状です。
健康に影響を及ぼすレベルの放射性物質が体内に入るという状況自体がまれであり、またそのような事態が起きたときには迅速な対処が要されるため、医学的に検証可能なデータを取るための条件を整えることが難しいというのがその理由です。
ブルガリアで子どもたちにゼオライト入りのお菓子が与えられたのも、ビーカー実験で確認された放射性物質の吸着作用と、その素材としての人体内での安全性が確認されているためでしょう。つまり、投与によるマイナス作用はなく、プラスの効果が期待されることから実施されたということです。
仮に医薬品の認可と同じ水準で、その効果を検証するとすれば、無作為化二重盲検法といって、「ゼオライトを投与する被験者のグループ」と「ゼオライトを投与しない被験者のグループ(ゼオライトに見せかけた偽薬を投与する)」を設定して、その経過を観察しなければなりません。
しかし、内部被曝という被害に遭った人々にそのような実験を行うのは人道的に問題があるのは言うまでもありません。それもあり、現在までのところゼオライトによる人体内の放射性物質の吸着・排出に関する詳細な研究はなされていないようです。
ゼオライトは重金属を体内から排出する
ただし、ゼオライトの放射性物質に対する働きは、重金属などを吸着・排出することと原理的には同じことなので、そこから類推することは可能です。
たとえば、重金属が体内に蓄積されている場合には髪の毛にその一部が出てくるので、毛髪に含まれる重金属類を検査することで体内の状態を推し量ることができます。
上の表は、ある人物に対し、ゼオライトの使用前・使用後の毛髪検査をした結果です。これを見ると、有害な重金属が軒並み減っているのがわかります。もし、体内に放射性物質があれば、それも重金属と同様に減っているのではないでしょうか。
ただ、このとき、体にとって欠かせない必須ミネラルも多少減っていました。その点が気になる方もいるかもしれません。
しかし、医療用としても使えるほどの高い品質のゼオライトであれば、その骨格構造の中に必須ミネラルが入っており、イオン交換によってそのミネラルを体内へ残してくるため、結果的には体外に排出される必須ミネラルの量は比較的少なくとどまるはずです。必須ミネラルが減ったとしても、それは一時的なものでしょう。
ゼオライトによる副作用はない
現時点でわかっている事実から推測できる、ゼオライトの体内での振る舞いについても触れておきましょう。
基本的なこととして理解していただきたいのは、ゼオライト水を飲用した場合には、消化管のすべての場所でその特有の作用が発揮されるということです。
まず、入り口となる口腔では、口の粘膜にゼオライトが吸着してそこでイオン交換が起こり、さまざまな有害物質を吸着します。そしていったん吸着されてしまうと、ゼオライトの骨格構造の外側にある物質とは化学反応を起こさなくなります。わかりやすくいうと、毒性が不活性化されるということです。
放射性物質の場合、放射線は発し続けますが、その物質の化学的な性質に由来する毒性は発揮されなくなります。
その吸着の働きは消化管の出口である肛門までの間ずっと有効ですが、ゼオライトにはそれ以外の作用もあります。
たとえば、消化管におけるゼオライトの作用に関するアメリカの論文によると、胃では胃酸を抑える作用を発揮し、十二指腸や小腸では消化活動を助け、結腸では腸内細菌叢のバランスを整え、最後の直腸から肛門にかけては腸のぜん動運動を調整して有害物質をたっぷり吸着させたゼオライトの排出を促します。
つまり、ゼオライトは消化管の全体にわたってその調子を整えつつ、有害物質の吸着・排出の働きを促進するわけです。
ナノレベルサイズにまで微細に加工されたゼオライトの場合は、消化管から吸収されて血流に乗り、全身の細胞へと運ばれる可能性もありますが、現在のところそれを証明する研究はありません。
しかし、血流に乗って腸管のところにまできた放射性物質や重金属などが、消化管内のゼオライトに吸着されることは十分にありえるため、その結果として、全身における放射性物質の総量を減らすことにつながると考えられます。
いずれにせよ、ゼオライト自体は体液や代謝物と化学的反応をまったく起こさないので、体において予期せぬ副作用をもたらすことはありません。つまり、安全な物質だということです。
ゼオライトの体内での安全性については、マウスとラットを使用した12か月におよぶ安全性試験でも証明されています。食品添加物や医薬品について非常に厳しい基準を課すことで知られるアメリカのFDA(食品医薬品局)でも、そのGRAS(Generally Recognized As Safe=おおむね安全であると認定される)リストに登録されています。
ゼオライトの安全性については、後の項で詳しく触れましょう。
