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第3章 ゼオライトの応用例から、内部被曝防止の可能性を考える
ゼオライトとは何か
この章では、ゼオライトが放射性物質を吸着・排出し、内部被曝を軽減する仕組みについて説明しましょう。
ゼオライトは「沸石」とも呼ばれる沸石族鉱物の総称であり、その語源はギリシャ語の「沸騰する(zeo)石(1ite)」という意味の言葉です。ゼオライトの構造の中には生成時に閉じこめられた水分があり、熱を加えるとその水分が急激に膨張・噴出して一見すると沸騰しているように見えることから、そのように命名されたと考えられます。
生成の過程ですが、火山の噴火で流れ出た溶岩が海水によって急激に冷やされ、激しい化学反応を起こしたときの気泡により、とても細かな孔がまんべんなく形作られます。それが、3500万年以上にわたる長い年月をかけて地中で圧力を加えられ、複雑な立体構造が特徴のゼオライトになるのです。
天然のゼオライトの発見は1756年。日本では、1950年に秋田県横手市で発見されました。火山が連なり、海に囲まれた日本列島は、世界でも有数のゼオライトの埋蔵地であり、現在では、国内10か所以上でゼオライトの存在が確認されています。
ゼオライトの持つ無数の細かな孔は、水溶液中でイオン交換を行って特定の成分を吸着させるという特性を持ちます。そのため、当初は水質改良のために用いられ、現在では衣類用洗剤に欠かせない成分としても使用されています。
洗剤の成分表にある「水軟化剤(アルミノけい酸塩)」とはゼオライトのことです。衣類の汚れは洗剤の脂肪酸と結びつくことで洗濯水を硬水にしてしまい、洗剤の洗浄能力を著しく低下させます。そこで、ゼオライトのイオン交換の働きによって洗濯水を硬水にしている成分を吸着して、水質を軟水に保つのです。
こうした製品には通常、人工的に合成されたゼオライトが使われています。孔の構造が一定の大きさで安定したものができるため、合成ゼオライトの方が製品化する上で好都合なのです。
しかし、体内の放射性物質を吸着・排出するには天然のゼオライトの能力も必要です。合成ゼオライトにはない性質があるので、その両者をうまく組み合わせることで最善の作用を引き出すことができると考えられます。
その理由を説明する前に、ゼオライトが私たちの暮らしの中で役立っている事例をもう少し見てみましょう。