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第2章 被曝を防ぐために今、始められること
一般人の被曝限度とホルミシス効果
放射線を受けることは「被曝」、受けた放射線の量を「被曝線量」といいます。
まず重要なのは、自然界にも「自然放射線」と呼ばれる放射線があり、誰もがそれを受けているということです。
自然放射線には、宇宙からのもの、大地からのもの、食物からのもの、大気中のラドンなどからのものがあり、1人の人間が1年間に自然放射線を受ける量は、日本では神奈川県の0・81から岐阜県の1・19ミリシーベルトまで幅があります。世界平均は2・4ミリシーベルトです。
その自然放射線とは別に、胸部レントゲン撮影やCTスキャンなど医療目的で受ける放射線があります。胸部のレントゲン撮影は0・05ミリシーベルト、胃のレントゲン撮影は0・6ミリシーベルト、CTスキャンは6・9ミリシーベルトとなります(それぞれ1回につき)。
日本人の場合、医療目的で受ける放射線量の平均は2・25ミリシーベルト(年間)になり、自然放射線と合わせた平均では1年間に3・75ミリシーベルトに達します。
国際放射線防護委員会(ICRP)が定める、自然放射線や医療目的で受けるものを除いた、一般人の被曝限度は1年間に1ミリシーベルトとされています。しかし、それを少々超えたからといって健康に害があるわけではありません。
むしろ微量の放射線は健康を増進する可能性があるとされます。そのような作用を「放射線ホルミシス効果」と呼んでいます。
たとえば、ラドンはその物理的半減期の短さから安全に活用できるため、ラドンを含んだ温泉は病気の治癒を願う人々で賑わっています。日本では鳥取県の三朝温泉、山梨県の増富温泉、秋田県の玉川温泉などが有名ですが、実は、これらの場所の湯治客は軽度の被曝をしに来ているのです。
これは、放射性物質の種類と放射能の強さしだいでは、放射線・放射能は人の健康に有益になりうるという一つの証しだといえるでしょう。