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第4章 ゼオライトをさらに深く理解する
9.フルボ酸との相乗作用について
フルボ酸とは何か
ゼオライトはフルボ酸という物質と一緒に摂ることで、体内における吸着と排出の働きを増すことがわかっています。そこで、最近ではこの両者を合わせた商品が見られるようになりました。
まず、フルボ酸とは何かについて簡単に説明しましょう。
フルボ酸は、海藻類が長い年月の間に微生物により分解されて生成された腐敗物質(フミン物質)のうち、沈殿しない無定形高分子有機酸を酸によって抽出したものであり、限られた場所にしか埋蔵されていない貴重な資源です。
幅広い種類のミネラルとアミノ酸が含まれているフルボ酸には優れた抗菌力、体内からの有害物質等の分離・浄化作用などがあり、抗ウイルス作用、抗炎症作用などの薬理効果も注目されています。
日本では食品として認可を受けている一方で、ヒマラヤ地方やインドなどでは若返り薬として珍重され、ドイツではフルボ酸を含むピート(泥炭)が関節炎やリウマチ、脊椎炎、痛風、皮膚病などの治療に用いられています。
現在までにわかっている、フルボ酸の主な作用は以下の通りです。
○有害物質の体内からの排出を促進する
フルボ酸は体内において、重金属などの有害物質をしっかりと保持して化学的反応を起こりにくくします。また、細胞内に入り込んだ有害物質を分離する働きがあり、体外へと排出しやすくします。
○抗菌作用
フルボ酸には強い抗菌作用があります。これはフルボ酸の触媒機能が微生物のタンパク質および炭水化物の代謝に影響を及ぼすためといわれています。
○抗ウイルス作用
抗菌作用と同じく、ウイルスの増殖を抑えます。感染症などに対する予防効果も確認されています。
○ミネラルの吸収促進
フルボ酸には膜浸透性を増加させ、ミネラルを血液中から細胞に移動させやすくする働きがあります。
○抗酸化作用
フルボ酸は、フリーラジカルを中和する抗酸化作用があるといわれ、心臓血管系の疾患にも応用されています。
○抗炎症作用
皮膚や内臓における炎症を抑え、浮腫(腫れ、むくみ)の発生を抑制する働きが認められています。
○ストレス管理
フルボ酸は、ストレスを引き起こすホルモンを減少させるといわれています。
フルボ酸はプルトニウムの排出を促進させる
フルボ酸について特筆すべきは、その放射線・放射能に関係する作用です。
フルボ酸の仲間であるフミン酸には放射線障害を予防する作用があるといわれます。フミン酸投与によって、コバルト60による致死量の放射線を照射されたラットの43パーセントが60日以上生存したという実験結果があります。
さらに、高線量の放射線(7グレイ=7000ミリシーベルト)の被曝を受けたラットの骨髄が、フミン酸投与によって正常を保ったことを示すデータもあります。
また、フルボ酸を含むフミン物質には、プルトニウムの移動性を高めて体外への排出を促進する働きも期待されます。
次に紹介する『ラジウムとプルトニウムの環境における移動』(Brice Smith, Alexandra Amonette, Institute for Energy and Environmental Research作成)という論文には、フミン物質がプルトニウムに与える影響についてこう述べられています。
プルトニウムは有機物および無機物と多くの複合体を形成することが知られている。これらの複合体の環境における存在はプルトニウムの酸化状態に関与し、移動性に影響を及ぼす。
放出された高い酸化状態にあるプルトニウムはフミン物質によって低い酸化状態に変化する。また、土中の微生物により、産生されたクエン酸などのリガンド複合体は環境におけるプルトニウムの移動性に影響を及ぼす。EPAの結論ではが低い(5〜6以下)とき、そして有機炭素が高濃度に溶解していたときに、プルトニウム有機物複合体が環境からの吸着と可動性をコントロールすると考えられる。
トリチウム、低濃度のコバルト、セシウム、ユーロピウム、プルトニウムのうちトリチウム以外はクレイ(イライトおよびスメクタイト)そしてゼオライト(モルデナイト、クリノプチロライト=斜プチロル沸石)の粒子とコロイド層を通過させることで、95パーセント以上を吸着させることができた。
ここには、プルトニウムがフミン物質によって有機炭素と共にコロイド化されることで、移動性が高まる、つまり動きやすくなるということが書かれています。
コロイドとは溶液と混濁液の中間の状態であり、イメージとしては「ドロっとした液体」を想像してもらうといいでしょう。これはあくまでも理解しやすくするためのイメージです。
その「ドロっとした液体」がプルトニウムと結合することで、本来は飛散しにくいプルトニウムが非常に遠方まで運ばれるということが起こります。これはアメリカの核実験場などで実際に確認された事実です。
このような作用を応用すると、フルボ酸がプルトニウムと結合してコロイド状態となり、ゼオライト粒子のそばへ移動してきて、そこでゼオライトがプルトニウムを吸着するという、ある種の連係プレイが可能となります。
論文後半にある、セシウムやプルトニウムをゼオライトとクレイ(フルボ酸を含む粘土)を通過させると95パーセント以上が吸着されたという記述がそのことを示しており、同様のプロセスが人体内でも起きると考えられます。
なお、フルボ酸によってコロイド状となったプルトニウムは放射線を放っているものの、その化学的性質からくる毒性はブロックされてしまいます。これもフルボ酸の大きな利点だといえるでしょう。
以上のことから、ゼオライトとフルボ酸のコンビネーションは、放射線と放射性物質から身を守る上でベストな組み合わせであるといえます。