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第4章 ゼオライトをさらに深く理解する
7.ゼオライトの安全性試験
ゼオライトの毒性試験
洗剤の成分としてゼオライトが採用されるときに、膨大な回数の安全性試験が実施されました。衣類やタオル、寝具などにゼオライトが残留する可能性を考えると、それが体内へ入り込む経路は数多く考えられるため、健康を害することのない安全な素材でなければならないということでそのような試験が行われたのです。
少々専門的な内容となりますが、これまでに行われたゼオライトの安全性試験のうち代表的なものを以下に掲載します。
毒性試験
1.急性経口投与毒性試験
多くの動物種で大量投与時のゼオライトの毒性は認められなかったが、横臥(体を横たえること)、運動不活発、沈静などの非特異的な症状が認められた。(Gloxhuber et al. 1983; OECD 2006)
2.皮膚暴露毒性検査
毒性はまったく認められない。(OECD 2006)
3.吸入毒性試験
炎症や間質性繊維症などは発生しなかった。(Gloxhuber et al. 1983; OECD 2006)
4.目への投与試験
ウサギの目にゼオライト10・を滴下したところ、ゼオライト粒子による物理的な刺激による反応が見られた。(Gloxhuber et al. 1983)
5.皮膚への慢性ゼオライト暴露試験
10パーセントゼオライトA液を21日間ヌードマウス(突然変異種のマウス)の皮膚に暴露したが、皮膚の炎症反応などは見られなかった。またヒトの皮膚に対して1パーセント溶液のパッチテスト(腕など、比較的害が少ない部分につけ、その反応を見るテスト)を行ったが反応は認められない。(Gloxhuber et al. 1983)
6.遺伝子に対する影響
5000・/・の大量投与下における遺伝子への影響を調べたが、何ら変化を及ぼさなかった。(NTIS 1979)
7.長期経口投与試験
(1)ゼオライトYを0, 800, 2,000 or 5,000 ・/・/dayラットに投与したところ、体重、腎臓・肝臓重量はまったく変化しなかった。 (Union Carbide Corporation 1977 as cited in OECD 2006)
(2)ラットに90日間250〜300・/・のゼオライトAを投与し、10・000ppm濃度を維持させたところ、尿量減少、血尿、ケトン体の排泄がみられた。病理検査では膀胱粘膜上皮のカルシウム沈着を伴う過形成が見られた(Gloxhuber et al. 1983; OECD 2006)。また、1,0002,000 ・/・/dayのLOAELというゼオライトを160〜200日投与されたラットでは膀胱・腎結石の発生が認められたが、腎機能や尿性状に変化はなかった。
本研究の検討
経口摂取したゼオライトのほとんどは溶解せず、変化せずに消化管を通過し、便として排泄される。ゼオライトの一部は胃の酸性環境で分解しケイ素とアルミニウム類を放出し、それは消化管から吸収される。
60・/・/日の用量が投与されたラットでは何の障害も起こらなかった。200‐300・/・の非常に高い用量が長期間投与されたラットでは腎臓と膀胱に障害を発生させたが、全身的な障害は引き起こさなかった。
特に体にとって重要な電解質であるミネラルや臓器に必要な微量元素への影響はまったく認められなかった。腎臓および膀胱に対する長期に及ぶ高用量のゼオライトは、消化管で分解された一部のゼオライトが吸収されて排泄されるケイ素が泌尿器系で濃縮された結果、大量のケイ素による物理的な傷害を膀胱上皮で引き起こした。
本研究の結論。ゼオライトは推奨量で使用する限り安全である。
(REGULATORY TOXICOLOGY誌より転載)
「……障害を発生させた」という箇所が気になる方もいると思いますが、私たちが日常的に摂取している安全性が十分に確認された物質であっても、大量に摂取すると健康問題を生じることがあるということを理解してください。
たとえば、生命維持に欠かせない水であっても、一度に6リットルも飲んだなら生命の危機を招くのです。
ここで紹介した安全性試験ではかなり大量のゼオライトの投与も行っており、その結果、障害が発生しています。しかし、それは一般の方が製品となったゼオライト水を飲用する際にはまず摂ることのない量であるため、この研究の結論でも「ゼオライトは推奨量で使用する限り安全です」と締めくくられています。
ゼオライトが体内のミネラルバランスと血液成分に与える影響
先ほどの毒性試験における、「体に重要な電解質であるミネラルや臓器に必要な微量元素への影響はまったく認められなかった」という部分は重要なポイントです。
ゼオライトはイオン交換によって、籠状の骨格構造の中にある陽イオンと体内の陽イオンを入れ替えることはすでに説明した通りですが、このときに有害物質ばかりでなく、体に必要な必須ミネラルを吸着・排出してしまう可能性があるからです。
事実、114〜115ページで紹介した毛髪検査の結果では、ゼオライトの使用前・使用後の比較において有害な重金属類だけでなく、必須ミネラルも減っていることがわかりました。
しかし、次に紹介する『マウスの造血作用とリンパ液の化学成分に対するゼオライト、クリノプチロライトの作用』(ルジェル・ボスコヴィッチ研究所ほか作成。上の表も同論文より)という論文によると、多量のゼオライトを摂取した場合にも血中の必須ミネラルの量に目立った変化はないことから、人の場合においても取り立てて大きな問題を生じないと思われます。
以下、その論文からの引用です。
ゼオライトを長期間投与すると、血液やミネラルバランスが障害されるのではないかという疑問が呈されているが、多くの研究で血液やミネラルバランスに及ぼす悪影響が否定されている。本研究の著者らはゼオライトをマウスの餌の中に、12・5パーセント、25パーセント、そして50パーセントをそれぞれ添加して、ミネラル、腎機能、そして肝機能の変化を10日、20日、30日ごとに検討した。
これらの結果から、白血球の中のリンパ球増加が見られた以外、赤血球数、ミネラル、腎機能、そして肝機能には、4週間の長期投与では影響が認められないことがわかった。
白血球やリンパ球が増えたのは多量のゼオライトが腸管を刺激したためでしょう。これは、人における標準的な使用方法では特に問題にならず、むしろ免疫系の働きを適度に調整することにつながると思われます。
ゼオライト粉末の吸入
ゼオライトの繊維状の粉末を長期間にわたって吸入した場合には、アスベストと同じように肺の中皮腫の原因となることが報告されています。
ただし、このような問題が生じるのは不適切な労働環境におかれたゼオライト鉱山の作業員ぐらいのものであり、一般の人が何らかのミスで多少のゼオライト粉末を吸入してしまったとしても、そのほとんどは気管の粘液に吸着して肺にまでは達しません。
また、ゼオライト水を飲用する場合には、そのような問題は起きようがないので心配は無用です。