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第2章 被曝を防ぐために今、始められること
生物濃縮によって増す被曝リスク
福島第一原発の事故から約1か月後の4月12日に公表されたところでは、放射性物質の想定放出量は、原子力安全・保安院の概算では37万テラ(37京)ベクレル、原子力安全委員会の概算では63万テラ(63京)ベクレルとのことでした。テラという単位は1兆に値しますから、これは大変な量であるといえます。
そのようにして周辺環境に放たれた大量の放射性物質はいったん大気や海で拡散しますが、今後、それが農作物や海産物の中に取り込まれて濃縮され、私たちの口の中に入ってくることになるでしょう。
先ほどコウナゴの基準値超えについて触れましたが、こういった小魚をより大きな魚が食べることで、食べた側の生物には多くの放射性物質が蓄積されることになります。このように食物連鎖の中で放射性物質が濃縮されていくことを「生物濃縮」といいます。
この生物濃縮はこれから、皆さんの生活において内部被曝をもたらす一番の問題として認識されることになるでしょう。
特に今回の事故では、原発から海へと放射性物質を大量に含んだ汚染水が直接漏出してしまったので、ヨウ素131やセシウム137ばかりでなく、ストロンチウム90やプルトニウム239といった、より危険性の高い放射性物質が海産物を介して口の中に入ってくる可能性があります。
福島第一原発からの海流の流れは福島沖から茨城沖、千葉沖へと向かっているため、今後、それらの海域で獲れる海産物には注意が必要でしょう。また、今後はさらに広範囲にわたって海が汚染される可能性があり、その場合、食べることを避けるべき海産物はさらに増えることになります。
なお、基準値を超えていなければ安全というわけではありません。
ストロンチウム90やプルトニウム239の実効半減期が長期間に及ぶことを考えるなら、それらが少しずつ蓄積していくことで、危険性は徐々に増していくことになるからです。