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第2章 被曝を防ぐために今、始められること
実際の被曝は空間線量の何倍にもなる
外部被曝と異なり、内部被曝は正確に計測できません。そのため、内部被曝の危険性に関する情報はとても少ないというのが現状です。
しかし、情報がないから危険性を考慮しなくていいということにはなりません。むしろ、身を守ることを第一に考えるなら、テレビで専門家たちが語る以上の危険性を考えた方がいいでしょう。
さて、被曝線量について考えるときに留意しなければならないのは、外部被曝の線量と内部被曝の線量のトータルが総被曝線量になるということです。当たり前のことですが、ここは重要なポイントなのでよく理解してください。
政府の発表、あるいはテレビや新聞などの解説では空間線量などがクローズアップされ、さらに年間100ミリシーベルトを超えなければ健康被害が現れないという知見に基づき、「1年間浴びても健康には問題ない線量」などと説明されています。
さらに、放射能汚染された農作物や海産物についても同様に、「1年間毎日、○キログラム食べても安全な線量」と説明されています。
このような説明を聞くと、政府の指示にさえ従っていれば、健康被害については何ら心配する必要はないと思う人も多いでしょう。
しかし、それ単体では安全な線量であっても、それがいくつも集まると危険な線量になりえます。さまざまな経路からの被曝が重なることで「塵も積もれば山となる」のです。
先ほど示した震災1か月後のデータでは、福島県(双葉郡)は2・2マイクロシーベルト/時であり、この線量が1年間続いた場合には約19ミリシーベルトの被曝となりました。しかし、これはあくまでも空間線量だけの話であり、被曝の経路がほかにもあることを忘れてはいけません。
たとえば、空間に飛散した放射性物質は地面に落ちてそこで蓄積するため、地面の放射線量は必然的に空間線量よりも高くなります。これは重要な点です。地面に近いところにいる子どもやペットは大人よりも放射線の影響を受けやすいことになるからです。
また、野外で活動している人は、地面から巻き上げられた放射性物質を吸い込んだり体に付着させたりしてしまいがちですし、屋外から入り込んだ放射性物質が室内に溜まることで、屋外よりも屋内の方が高い線量を示すということもありえます。
それに加えて、水や食物からも放射性物質が体内に入ってくれば、実際に被曝する線量は空間線量の数倍になるでしょう。
その総被曝線量を正確に把握するのは大変難しいのですが、中部大学の武田邦彦教授が2011年4月5日のブログで提唱されていた暫定的な計算法では、福島と茨城の人は空間線量に4をかければよく、東京、千葉、宮城、会津若松などの人は2をかける、それ以外の地域の人は当面は空間線量をそのまま被曝線量と考えればよい、としています。一つの参考にできそうです。
その計算法を採用すると、福島県(双葉郡)の2・2マイクロシーベルト/時の線量は、年間では、約19ミリシーベルト×4=76ミリシーベルトとなり、そろそろ健康被害が心配な数値となります。
一方、震災1か月後の東京(新宿区)における空間線量は、0・083マイクロシーベルト/時でしたから、年間では約0・727ミリシーベルト。そこに2をかけると1・454ミリシーベルトとなります。これはそう心配ない数値ですが、飲食するものに気を配らない人だと、これより高い線量を被曝する可能性もあるでしょう。