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第1章 食から始める放射能対策
ワカメは本当に放射能に対して無力なのか
どうして、ここで紹介した人々は放射能の害を逃れることができたのでしょうか?
いくつかのポイントがありますが、秋月医師のケースではワカメが重要な鍵を握っていると思われます。
すでに多くの人がご存じのようにワカメにはヨウ素が含まれており、甲状腺への放射性ヨウ素の取り込みを阻害する働きがあります。甲状腺にはヨウ素が集まりやすいので、ワカメなどに含まれるヨウ素を甲状腺に満たしておけば、そこに放射性ヨウ素が入り込む可能性が低くなるということです。
ただし、「ワカメは放射能には効果がないと聞いた」という人もいると思います。
たしかに、テレビなどでは科学者が「ワカメなどを摂っても放射性ヨウ素の取り込みを阻害する効果はない。安定ヨウ素剤でなければならない」とコメントしています。これはこれで部分的には正しいのですが、安定ヨウ素剤はそれ自体が毒物なので、よほどの緊急事態でなければ摂取してはならないという事実を考慮すべきでしょう。
つまり、テレビに出ている科学者たちの言い分では、そのような緊急事態となるまでは、空気や水を通しての微量の放射性ヨウ素の体内への侵入に対して打つ手がないことになるのです。
しかし実際には、そのような軽度の被曝に対して、ワカメなどヨウ素を含む食品を積極的に摂ることは有益です。
普段からヨウ素を豊富に含む海藻類を盛んに摂っている日本人は、ほかの国の人よりも甲状腺へ放射性ヨウ素を取り込みにくいといわれています。それならば、積極的にワカメなどヨウ素を豊富に含む食品を摂ることは有益ではあっても有害ということはなく、そのように有益な結果しか想定できないのであれば、やらないよりはやった方がいいということになります。
先の例でも示されているように、放射能を防ぐことを考えるときには、高濃度の放射能にさらされるケースとそれ以外のケースに分けて考える必要があるでしょう。
「直ちに健康に悪影響はないから心配しなくていい」という状況と、「放射能が危険なレベルに達したので退避してください」という状況との両極端の中間に、「長い目で見ると危険かもしれないので、予防的にこれをやっておきましょう」という方策があってもいいはずです。もしくは、「安心です」「安全です」と誰かに言われても、それが100パーセントは信頼できないのであれば、自分が安心できるような方策を考えるべきです。
ワカメ、ヒジキ、昆布といった食品は、そのような意味で放射能から私たちの体を守ることに役立つといえます。
大気中や水道水中の「健康に影響がない」といわれるレベルの微量な放射性ヨウ素を神経質に気にしているくらいなら、そういった食品を積極的にとって自ら安心を手にした方がいいでしょう。
玄米に含まれるフィチン酸という成分には、有害な重金属を含む金属イオンを吸着して体外へ排出する作用が知られています。一説には放射性物質も吸着・排出できるといわれていますから、それが彼女の生死を分けたのかもしれません。